IBD外来
IBD外来について
IBDとは?
IBD(炎症性腸疾患)は、主に潰瘍性大腸炎とクローン病を指し、消化器系に炎症を引き起こす慢性的な疾患です。
これらの病気は、症状や治療法が多少異なりますが、いずれも生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
こんな症状はありませんか?
- 長期にわたる下痢や便秘
- 腹痛や腹部の不快感
- 疲労や体重減少
- 血便や粘液便
当院のIBD治療の特徴
はくあいクリニックはIBD治療の長い経験と実績を誇ります。
治療は長年の治療歴と基礎研究に基づいた深い知識が特徴で、世界的に有名なオックスフォード大学の留学経験を持つ副院長が行います。
さらに、多職種からなる医療チームが協力して治療を行い、最新の医学的知識と技術を駆使してIBD治療に取り組んでいます。
当院の治療は、患者様の生活の質を向上させることも目指しており、治療だけでなく、生活指導や栄養指導などの総合的なサポートも提供しています。
これからもはくあいクリニックは、患者様の健康と安心を第一に考え、最善の治療を提供することをお約束します。
潰瘍性大腸炎について
潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎は、大腸の内壁が炎症を起こす病気です。
主な症状は、下痢、腹痛、血便などです。
症状の程度は人それぞれ異なり、軽度から重度まで様々です。
この病気は一般的には20代から40代にかけての成人に多く見られますが、年齢に関わらず発症する可能性があります。
潰瘍性大腸炎の症状
腹痛
潰瘍性大腸炎やクローン病の患者様に共通して見られる主要な症状は腹痛です。
この痛みは、腸に潰瘍が形成されることによって引き起こされます。
初期段階では痛みは軽度で一時的に感じられることが多いですが、病状が進行すると痛みの強度や持続時間が増してきます。
血便・下血
血便は便中に血が混ざる現象を指し、下血は肛門からの出血を意味します。
これらの症状は潰瘍性大腸炎に特有であり、クローン病ではそれほど一般的ではありません。
大腸の粘膜に潰瘍が形成されると、粘膜が損傷し、その下の血管から血が滲み出ることがあります。
このような出血が継続すると、貧血や発熱の原因となることがあります。
血便や下血の症状が見られる場合、当院での詳しい検査を推奨します。
下痢
消化管からは日常的に3~4リットルの水分が分泌され、これが大腸や小腸で吸収されて便として排泄されます。
しかし、潰瘍が形成されると、この吸収機能が低下し、下痢が引き起こされます。
重症の場合、一日の大半をトイレで過ごすことも考えられます。
便秘
便秘はクローン病に特有の症状で、病状によって腸が狭くなり、便の通過が困難になることが原因です。
潰瘍性大腸炎やクローン病の患者様で、便秘、嘔吐、腹痛が強く感じられる場合、早めに当院で診察を受けることが推奨されます。
発熱
発熱はクローン病において特に一般的な症状で、病状の悪化とともに発熱のリスクが高まります。
微熱が持続することが多いですが、腹部に膿が溜まると高熱が出ることもあります。
嘔吐
嘔吐は特にクローン病において一般的な症状で、炎症により腸が荒れ、狭窄部分が形成されることで食物が詰まり、嘔吐が引き起こされます。
潰瘍性大腸炎やクローン病の患者で、便秘や嘔吐、腹痛が強く感じられる場合、早めに当院で診察を受けることが推奨されます。
体重減少
慢性的な炎症が存在すると、腸からの栄養吸収が低下します。
下痢が続くと、栄養素が失われるため、体重が減少します。
また、腹痛や下痢を避けるために食事量を減らすことも、体重減少の原因となります。
痔・肛門のトラブル
痔はクローン病の初期症状として現れやすく、特に若い世代では「痔が治らない」と感じることが多いです。
クローン病は口から肛門までの消化管全体に影響を及ぼすため、肛門での症状が現れると、裂肛、痔瘻、肛門周囲膿瘍などのトラブルが起こる可能性があります。
特に10代の若者で治りにくい痔の症状がある場合、クローン病の可能性が考えられます。
潰瘍性大腸炎の治療
薬物療法
潰瘍性大腸炎の治療には、薬物療法が主に用いられます。
病状や症状の程度に応じて、以下のような薬物が選択されます。
5-ASA製剤
潰瘍性大腸炎治療の基本となる薬で、腸の炎症を鎮静化する効果があります。
経口薬、坐薬、注腸剤など、患者の状態や症状の範囲に応じて適切な剤型が選ばれます。
また、病状が安定している寛解期を維持するための治療としても使用されることがあります。
ステロイド
ステロイドは炎症抑制作用が非常に強く、活動期の炎症を鎮め、寛解期への移行を促進します。
しかし、寛解の維持治療としては使用されず、短期間の服用が基本です。
免疫調整薬
潰瘍性大腸炎の正確な原因は明らかではありませんが、過剰な免疫反応が関与しているとされています。
このため、免疫反応を調整する薬が使用されます。
主に寛解の維持治療として利用されますが、2018年には寛解導入と維持の両方に使用可能な内服薬が新たに登場しました。
生物学的製剤
生物学的製剤は、炎症を引き起こす体内物質の作用を抑制するものです。
ステロイドや免疫調整薬に比べて副作用が少なく、高い治療効果が期待されます。
治療は、静脈注射や皮下注射として行われます。
JAK阻害剤
Januskinase(JAK)阻害剤は、IBDの病態に関与している多くのサイトカインの細胞質内シグナル伝達を阻害することにより、腸炎抑制効果を有します。
白血球除去療法
この治療法は、腕の静脈から血液を取り出し、炎症に関与する白血球などの成分を特殊な装置で除去した後、血液を体内に戻すものです。
安全性が高く、副作用が少ないのが特徴です。
1回の治療には約1時間が必要で、週に1〜2回、合計で5〜10回の治療が行われます。
手術(外科的治療)
内科的治療だけで症状の改善が見られない場合や、大量出血、腸の穴開き、大腸癌の発症、繰り返しの入退院が必要となるような状態の場合には、外科的治療が選択されることがあります。
この治療では、病変部分の大腸を切除する手術が行われます。
潰瘍性大腸炎の活動期と寛解期について
潰瘍性大腸炎は、その病状の進行に応じて主に「活動期」と「寛解期」の二つのフェーズに分けられます。
活動期とは、患者様が症状の強い発現を経験する期間を指します。
具体的には、腹痛、下痢、血便などの症状が顕著に現れることが多いです。
この時期は炎症が活発になっていることを示しており、適切な治療やケアが必要とされます。
一方、寛解期は症状が落ち着き、日常生活を通常通り過ごせる時期を指します。
この期間中、炎症が鎮静化し、体の不調や痛みが大幅に減少することが特徴です。
治療の進行とともに、多くの患者様は寛解期を長く維持することができます。
しかし、潰瘍性大腸炎は再発性を持つ疾患であるため、一度寛解期に入ったとしても、何らかの要因で活動期へと移行することがあります。
このような再燃を繰り返すことは、患者様にとって大きな負担となるため、定期的な診察や適切な治療の継続が重要となります。
潰瘍性大腸炎の合併症
潰瘍性大腸炎は、その進行に伴い、炎症が激しさを増すとともに、腸管壁の深部まで影響を及ぼすことがあります。
これにより、様々な合併症が引き起こされる可能性が高まります。
腸管に関連する合併症
腸管に関連する合併症としては、炎症の悪化により大量の出血が起こることや、大腸穿孔という、大腸の壁に穴が開く状態が発生することがあります。
さらに、炎症が持続することで、大腸狭窄という、大腸の通路が狭くなる状態も生じることがあります。
特に注意が必要なのは、腸内にガスや毒素が蓄積し、大腸が過度に拡張する中毒性巨大結腸症です。
この状態は、全身に発熱や頻脈といった症状を引き起こすことがあります。
さらに、潰瘍性大腸炎が長期間にわたり適切に管理されない場合、大腸癌のリスクも高まることが知られています。
大腸以外の部位に関連する合併症
大腸以外の部位に関連する合併症、いわゆる腸管外合併症も存在します。
これには、関節炎や、皮膚に関連する疾患(結節性紅斑や壊疽性膿皮症など)、尿路結石や胆石の形成、肝胆道系の疾患が含まれます。
また、目に関連する疾患としては、虹彩炎などが挙げられます。
これらの合併症は、潰瘍性大腸炎の影響が全身に及ぶことを示しており、総合的な治療とケアが必要となります。
クローン病について
クローン病とは?
クローン病は、消化管全体に炎症を引き起こす可能性がある病気です。
主な症状は、激しい腹痛、下痢、疲労、体重減少などです。
この病気は特に若い人々に多く、症状は周期的に悪化することが一般的です。
クローン病の症状
腹痛
クローン病、そして潰瘍性大腸炎の患者の中で最も一般的に報告される症状は腹痛です。
この痛みは、腸に形成される潰瘍の結果として発生します。
痛みは初めは軽度であり、一時的に感じられることが多いですが、時間が経つにつれてその強度は増していき、持続時間も長くなることがあります。
血便・下血
血便は便中に血が混ざる現象を指し、下血は肛門からの出血を指します。
これらの症状は、特に潰瘍性大腸炎において一般的ですが、クローン病ではそれほど頻繁ではありません。
潰瘍が大腸の粘膜に形成されると、粘膜が損傷し、その下の血管から血が滲み出ることがあります。
さらに、消化管からの持続的な出血は、貧血や発熱を引き起こす可能性があります。
下痢
通常、消化管からは1日に約3~4リットルの水分が分泌され、これが大腸と小腸で吸収されて便として排出されます。
しかし、潰瘍の形成により、腸の吸収機能が阻害されると、下痢が引き起こされることがあります。
便秘
クローン病の患者において便秘は一般的な症状の一つです。
病気が進行すると、腸の炎症や腸の壁の肥厚化が起こり、これが腸の通路を狭める結果となります。
この狭窄化が進行すると、便の通過が困難になり、結果として便秘が引き起こされます。
長期の便秘は、腹痛や腹部の膨満感を伴うことが多いです。
発熱
クローン病の進行に伴い、体の免疫反応が活発化し、これが発熱を引き起こす原因となります。
特に、腸の炎症が激しい場合や、腹部に膿が溜まる場合には、高熱が発生することがあります。
発熱は体の炎症のサインであり、病状の悪化を示唆することが多いです。
嘔吐
クローン病による腸の炎症や狭窄は、食物の通過を妨げることがあります。
特に、狭窄部分で食物や液体が滞留すると、胃の内容物が逆流し、嘔吐を引き起こすことがあります。
また、腸の動きが乱れることで、消化不良や胃の過度な拡張が生じ、これも嘔吐の原因となります。
体重減少
クローン病の進行は、腸の吸収機能に影響を及ぼすことが多いです。
特に、栄養素や水分の吸収が低下すると、体は必要なエネルギーや栄養を得ることが難しくなります。
この結果、患者様は体重減少を経験することが一般的です。
さらに、痛みや不快感から食事量が減少することも、体重減少の原因となります。
痔・肛門のトラブル
特にクローン病では、痔が初期の症状として現れることが一般的です。
若い世代の中で「痔がなかなか治らない」という患者が肛門科を訪れると、実際にはクローン病であることが判明するケースが多いです。
クローン病の治療
クローン病は慢性的な疾患であり、治療の目的は症状の緩和と再発の予防です。
治療方法は薬物療法、白血球除去療法、栄養療法、そして外科的治療が主なものとして挙げられます。
病状や患者の体調に応じて、最も適切な治療法が選択されることが重要です。
薬物療法
5-ASA製剤
非ステロイド性の抗炎症薬で、特に初期のクローン病や軽度の症状に対して効果的です。
炎症を起こしている腸の部位に直接作用し、炎症を鎮める効果があります。
経口薬としての摂取や、直接的に炎症部位に届けるための坐薬や注腸剤としての使用があります。
ステロイド
ステロイドは強力な炎症抑制作用を持つ薬物で、中等度から重度の活動期の症状に対して迅速に効果を発揮します。
しかし、長期間の使用は骨粗しょう症や糖尿病などの副作用のリスクが高まるため、短期間での使用が基本となります。
症状が改善された後は、徐々に減量し、他の薬物に切り替えることが多いです。
免疫調整薬
クローン病の原因として考えられる過剰な免疫反応を抑制するために使用されます。
これにより、炎症の発生や進行を抑えることができる。
アザチオプリンや6-メルカプトプリンなどが代表的な薬物として知られています。
これらの薬物は、ステロイドの使用量を減少させる助けとなることもあります。
生物学的製剤
生物学的製剤は比較的新しい治療法で、特定の炎症を引き起こす体内物質の作用を特異的に抑制するものです。
中等度から重度のクローン病に対して、特に他の治療が効果不足の場合に使用されることが多いです。
JAK阻害剤
Januskinase(JAK)阻害剤は、IBDの病態に関与している多くのサイトカインの細胞質内シグナル伝達を阻害することにより、腸炎抑制効果を有します。
栄養療法
食事の内容や摂取方法を工夫することで、腸の炎症を抑え、栄養状態を最適化します。
特定の栄養剤を用いて、腸を休ませるとともに、必要な栄養を補給する治療法です。
経腸栄養療法や完全静脈栄養療法など、病状や患者様の状態に応じて選択されます。
白血球除去療法
白血球除去療法は、炎症に関与する白血球を血液から取り除くことで、炎症の抑制を図ります。
特殊な装置を使用して、血液を体外に取り出し、白血球を除去した後に体内に戻す方法です。
手術(外科的治療)
薬物療法や他の治療法での症状の改善が難しい場合、または腸の狭窄や穿孔などの合併症が生じた場合に、外科的治療が検討されます。
この治療は、病変部分の切除や腸の再建など、病状や病変の位置に応じて行われます。
クローン病の活動期と寛解期について
クローン病の進行は、主に「活動期」と「寛解期」の二つのフェーズに分けられます。
活動期は、症状が顕著に現れる時期を指し、この期間中は患者様はしばしば強い不快感や痛みを経験します。
一方、寛解期は病状が安定し、症状が軽減または消失する時期を指します。
現在の医学では、クローン病を根本的に治癒する治療法は確立されていません。
そのため、治療の主目的は活動期の症状を最小限に抑え、寛解期をできるだけ長く維持することです。
しかし、すべての患者様が常に寛解期を維持できるわけではなく、病状の再燃や症状の再発を経験することもあります。
クローン病の合併症
クローン病は、初期段階では浅い粘膜に炎症を起こしますが、病状が進行すると深い部分の粘膜にも炎症が広がります。
この炎症が腸管壁の深部にまで達すると、多岐にわたる腸管の合併症を引き起こす可能性があります。
具体的には、腸の狭窄、穿孔、瘻孔の形成、膿瘍の発生などが挙げられます。
さらに、大量の出血や、小腸、大腸、肛門のがんのリスクも考慮されます。
一方、クローン病は免疫系の異常が関与しているとされており、その影響は腸だけにとどまりません。
腸以外の部位での合併症、いわゆる腸管外合併症も報告されています。
これには、アフタ性口内炎や結節性紅斑、壊疽性膿皮症といった皮膚病変、強直性脊椎炎や多関節炎などの骨・関節疾患、さらには眼の疾患や腎結石、肝胆道系の疾患などが含まれます。
これらの合併症は、クローン病の診断や治療の過程で注意深くモニタリングされるべき重要なポイントとなります。